「東京」

ホテルに到着は出来たが、列車、地下鉄、バス、タクシーに入国後14日間は一切乗ることを許されていない。不特定の人との面会も許されていないし、飲み会なんてもってのほか、ホテルの部屋で自分で選んだ監禁に近い状態で、岡山市保健所に毎日東京から健康状態と、体温の連絡の義務がある。もうこれは大変なことをしてしまったなと、思いながら一人で過ごしている。電話とEメールで用件を処理するが、今はスマートフォンを持っていないと暮せない日本になっているのを痛感する。ササッと打ち込んで、情報、買い物、手続き、申込み、若い人には良いらしいが、われわれ老世代の人間には誠に不自由である。

何もしないで休養の14日間と思うのだが、さすがこれでは体が参ってくるし、いろいろな妄想が湧いて精神状態は大変に良くない。テレビも読書も面倒になる。

今は厚生大臣に誓約書を出しての滞在であるから、2週間は動けないが、恐らく岡山に辿り着くまでの気力が自分にあるか、どうかの問題に思えてくる。パリに帰る手配も出来ているが、これから帰って事務手続きが一杯のまた面倒な日々をと考えると、勇気が失われる自分がある。もう気力のある制作の日々は自分に戻ってこない、惰性の制作だけだろう。

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