岡山市出身でフランスのパリを拠点に活躍する画家、赤木曠児郎さんから月に1回程度「パリ通信」を送っていただいています。

2020年12月12日

「全てが夢の、外出禁止」

フランス人の年間最大のお祭り行事、クリスマスを迎えるに当たって、現在のコロナ規制が緩るむのではないかと、みんな期待をしていたが12月10日、たった今の政府記者会見発表ですべて夢となった。ニュース専門のテレビチャンネルで誰でも見られるから関心を呼ぶし、延々と微に入り細に渡り記者の質問に答え、一時間を越える記者会見実況であった。12月15日より3週間の現状規制延長で、夜間8時以降翌朝6時まで外出禁止令など、むしろ規制が強くなっている。文化関係の催しは映画館、美術館、劇場、来週からは開けそうだと期待していたのだが全て禁止、展覧会も開けない。1月4日にまた次のどうするかが、コロナの罹病率の統計を見て決められる。10月末から閉めさせられていた一般商店や美容院が、年末セールシーズンで開店できるようになって、客を待っているだけがましと言えるだろう。

政府が色々な防御規制を発表する、これらは全て最低基準であってそれに従えば安全な訳ではない。自分でもう少し厳しくして、「自分自身で守らねば」どうにもならないことを人々は知っているから、公共乗り物も、街も人影が少ない。伝染病発生の時には都会を避け、地方のバカンス用セカンドハウスに避難疎開して過ごすのが、古くからの習慣で残っている。あれほど派手だったハグの光景も、握手もすっかり影を潜め、自分で外に出ること、人と会うこと、招待などは、自然控えている。自宅勤務で外に出る人数は減少しているが、事務所などの営業活動は、春と違って全て開いているので地下鉄、バス、通勤時間は少しだけ混むが、昼間はガラガラに近い。人と人が触れないように間隔が保たれているのである。通常なら12月は、クリスマスの贈り物やパーティ用の買い物を一杯抱えた人が溢れるシーズンだが、あまり見かけない。そう言えば昨年の歳末クリスマスシーズンも、土曜日毎の黄色いベストデモと、年金制度改革反対の地下鉄・バスが2ヵ月の大ストライキだった。通常は賑わうパリ中心部の百貨店や専門店に出掛けられなくて、住んでいる地区の商店街で間に合わせる結果となり、思わぬ活気で逆にストライキにホクホクだったとも聞かされた。今年は加えてレストラン、カッフェ、スキー場も閉めさせられて、来年1月末まで営業ができないのだから、旅行者もやってこないし、多くのホテルも閉まっているが、食料品関係の店だけは豊富に競っている。フランスでは年末が会計年度末になるので、忙しく追われる色々な協会や団体の会員総会も、多勢の集まる集会は禁止で開けず、規約はあるしどうなるのか大混乱である。宗教も信者の集会が禁止されているのでお手上げ。真面目な信者の人たちの「私たちのおミサを開かせて下さい」と言うデモまで起きては、教会堂に入る人数制限などして、政府も考慮せざるを得ないところに来ている。何しろクリスマスなのである。

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