岡山市出身でフランスのパリを拠点に活躍する画家、赤木曠児郎さんから月に1回程度「パリ通信」を送っていただいています。

2019年8月12日

「夏の出来事」

夏休みに入った。7月と8月の2カ月にわたる。パリジャンは太陽と自然を求めて田舎に行き、自然にふれ、都会の汚染や煩わしさを忘れようとするのが、人間の権利だと思っている。80年ほど昔、1936年に、皆の選挙で闘って獲得した、大事な「夏休み権」なのである。それまでは避暑なんて、貴族やブルジョアだけのもので、縁の無いものだったのである。どんなに激しいデモやストの声を上げていても、バカンスはバカンスで、夏休み中は静かになりみんなバカンス、また9月の秋のシーズンが始まって声を上げるのを続けると言うのが、ずっと見て来た常識だった。ところが昨年の11月から始まった「黄色いベスト運動」は、パリ市内でこそ警戒がきびしくあまり目立たないが、各地方では激しい行動がバカンスシーズンに入っても毎土曜日ごとに収まらない。主義、主張があるわけでなく、右も左も一緒になって現体制への不満があると、ナイロンの黄色いチョッキを羽織って、メールで連絡が行き渡って集まって、庶民の意見の発表の場所でもあるわけなのである。

page1/3