建物の裏側(ミオリス通りにて)
「近頃のこと、展覧会など」
あまりパリには展覧会が多いので、丹念に見ていては自分の仕事の時間が潰れてしまう。目をつぶって見ないのが一番だが、それでも時には展覧会、音楽会にも足を運ぶ。パリの日本文化会館で5月まで続く「創意のランドスケープ」展に行く。フランス語の題名を直訳すると(豊かな風景画)だが、分からない日本語名の副題が出されている。大きな本会場に3台の白い4角な台があって照らされ、真ん中にちょこんと白や黒の小さなオブジェが置かれているだけの、真っ暗な会場である。狐につままれたような思いで、外に出る。後で聞くと自分でスマートホンや携帯に映して見ると、いろいろなカラーが現れる現代のコンピューターアートで、日本が最前線の作品とのことである。展覧会とは気に入ったら購入して、自分の手許に飾れる物と思って観賞に行くのとは時代が変わって、花火でも見に行くような、見世物ゲーム参加型が、現代アートの最先端らしい。同じ日本文化会館で、パリにフランス政府給費留学生できて住み着き、55年になる音楽作曲家、丹波明さん記念コンサートの夕べが開かれて、これも招かれて出掛ける。ステージに映画スクリ-ンがあり、フロント前面に紗の幕が張られて、透けて見える間にピアノや4重奏の譜面台が入って置かれている暗黒に近いコンサート会場で、いつもと勝手がちがう。丹波さん作曲の「タタター」、邦題だと(如)と一字で書かれ(もし)というような意味だろうか。アーとかウンとか、掛け声と機械音だけの連続で、演奏者は居なくて、豊島由佳さんという映像作家のモノクロ画像が背景とフロントに交差して飛び交う交響曲なのであった。結構退屈しなくて面白く、他の普通の4重奏作曲も奏者に光が加わって、光がキラキラしながら聞かせる趣向、音楽鑑賞だけでなくて自分で見る仕掛けで、参加が現代アートなのだろう。
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