岡山市出身でフランスのパリを拠点に活躍する画家、赤木曠児郎さんから月に1回程度「パリ通信」を送っていただいています。

2014年7月11日

「鏡」

  今季一番と評判の、シャトレ座「王様と私」の復刻版ミュージカルを見る。満席に近い入場者、一番高い席を買ったのだが後ろの方の席だった。連夜どのような人たちだろうと、周りの席の群衆を見てしまう。どこかの会社がグループで買って応援したのだろうか、きっちりしたネクタイ背広姿に夫人同伴の、同じようなタイプの年輩カップルがズラリ収まっている。俳優、演出、舞台、劇場、大勢の人の生活が、支えられているのだと改めて考えるし、チケットを買って見てあげることが、一番望まれる援助なのだと強く思う。
 観光、歓楽の世界的大都会の定評を確立しているパリは、演劇、音楽、スポーツ、展覧会、発表会、講演会、見学会、見本市、趣味の会、毎日の行事に溢れ、催しに事欠かない。全てに気を取られると、ふわふわと遊んで暮らしているような具合になって、一時の滞在留学、視察旅行なら全てが体験でそれもよいが、仕事を持つと自分の仕事に集中していないと、現実に取り残されて行く。実際、東京に暮しても、能、歌舞伎、コンサート、アングラ劇と、毎日の暮らしに、見歩く訳ではない。パリにいて偶にあるから目にするのである。

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