セーブル門大通り
「鏡」
わが家に近いので、招かれるとパリ日本文化会館のホールの催しには行く。ここには、パリで発表して、見せたい催しが、日本から集まって来る。最近の週も、野村萬斎さんがシェイクスピアの「マクベス」を、日本語で演出する。東京の世田谷劇場で、今から4年前に能と狂言を取り入れて上演されたものだ。
次の日の夜はケニアの小型竪琴のようなニヤティティというイチジクの木と、テグスを使って作る現地楽器と唄を聞かせる演奏会に招かれる。日本人の向山恵理子さん(芸名アニャンゴ)という名前の女性の演奏である。現地では男性のみが演奏する決まりで、世界でたった一人の女性演奏家との売り込み、ケニア大使代理の夫妻も参加であった。
その後別の部屋で、友禅染で人間国宝・森口邦彦さんの、フランス人が撮った生活記録映画の発表会と講演が、同じ会館でダブル。57年ぶりの三越伊勢丹の新ショッピングバッグは、4月にこの人のデザインで話題だし、パリの国立装飾美術学校に留学していたとかで、フランス語に今も巧みで一同驚く。
その翌日の夜は、上妻宏光と塩谷哲、津軽三味線とピアノコンビの、4年ぶりの同会場での演奏会。どちらも強い音の張り合いで、力が沸く。6月は入り口ホールの一面に飾られた下重暁子さんコレクションの、筒書き糊染めの木綿コレクションも圧巻であった。もう30年も前に芹沢銈介さんの染色を、画家バルチュスの紹介で日本の美として、国立グランパレ美術館で展覧会が開かれたことがあるが、昔からこのような伝統が日本にあったのかと、改め見直す。会館も開いて20年近くを迎えるのに、演歌の公演は、1回キム・ヨンジャさんがあっただけ。童謡歌謡を安田・由紀姉妹が1回開いただろうか、同じ日本文化なのに残念である、頑張って発信しなければ。
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