「ピアフとコクトー」

 コクトーは、詩人、作家、演劇、映画、デッサン、前衛、古典、多種に展開、1920年代の終わりごろから、ドイツ占領中、戦後、フランス文化人の顔なのである。「美女と野獣」(1948)の映画など、名作で有名だが享年74才だった。パリ近郊に晩年は住み、百草園を作り、その中に自分の教会堂までデザインして建てている。ピアフとは、同時代の有名人同志の友達で、コクトーは俳優ジャン・マレーだとか方向が違うのだから一緒になることはないが、ピアフのファンで友人、同じ芝居に共演したりもしている。コクトーも、亡くなっても現役で飽きられず、戯曲の上演とか、豪華コレクション本、沢山のデッサンも市場に消えることがない。日本だと武者小路実篤の絵といったところだろうか。イブ・サンローランの共同経営者だったピエール・ベルジェが、コクトーの独占相続人で管理している。この人はまた別に画家ベルナール・ビュッフェ独占の画廊のオーナーでもある。社会党のメンバーで、ジャック・ラング文化大臣の1980年代に、新興のプレタポルテ既製服産業に押され、当時下り坂だったオートクチュール同業組合に若手デザイナーを引き入れ、人気を再興させた超有能経営者でもあり、バスチーユの新オペラ座まで任され、経営総監督も務めていた。美術品のコレクションでも知られ、日本にも有名な、サンローラン、ビュッフェ、コクトーが、一人の手に集まって、フランス文化のイメージを、半世紀以上にわたって君臨しているのだから、こちらもシャッポである。

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