「印象記」

  パリ市内でこの期間でも、旅行者の集まる場所は決まっている。世界的な有名ブランド本店には、まず溢れる。オペラ裏の百貨店、ギャラリーラファイエット百貨店本店、ここも大混雑だが、年間売り上げの60%が、現在は中国人客の買い物だとされている。有名なエルメス本店では、知人からの話しに聞いて驚いた。東洋人客でゴッタ返しに溢れていて、中国の人達でしょうと聞いたところ、それはもう昔の事で、現在はインドネシアからの人達が主流と聞かされたそうである。同じ東洋人でも、20年前は日本人、それから韓国、中国、次々と大経済圏が移動しているのが、肌で感じられる話である。TPP条約なども、農業とか特定の族議員たちの、自分たちの票の事しか考えない盲目に振り回されて、日本の将来を見失ってはと、心配になる。
   夏休みの間に、アッという間に日本大使公邸の住人が変わった。現大使が安倍内閣の内閣法制局長官に就任され、急遽帰国されたからである。大使は大体3年が任期で、もう少しは居られると思っていたら、本当の急なことであった。半世紀もパリに暮していると、入れ代り立ち代りで、お名前も年代もあやふやになり、大使館で歴代大使のフォトが並んでいるのを眺めて、思い出すしか手がない。しかもパリには、大使と言っても本当の大使館の大使(こんな言い方は失礼かも知れないが)と、OECD(国際経済協力機構)とユネスコ(国際教育文化協力機構)、そちらにも大使が居られるので、3人3カ所、あまり関係ない人には、混乱するだけだろう。それぞれ公館、公邸が与えられているが、日本国大使公邸は、フランス大統領官邸と同町内、3軒並びの隣家の英国大使公邸だと、女王さまがフランスに訪問された場合、自国の公邸に宿泊されるのである。自国の権威と、一番の安全だからである。宿屋に泊るなんて、はしたないことはなさらない。

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