スーパー・イタリー・タワーを望んで
「パリでは、今日」
桂由美さんと、ジャン・ドウーセという若いデザイナーがコレクションの案内状を送って下さったので、見に行く。桂由美さんのところでは、友禅プリントがテーマ。フェリックス・ブーコブザと言うアートディレクターが採用され、日本のモチーフが現代漫画風にくっきりとした、強い原色のプリントになってとても面白い。洋服デザインはジ・エイという東南アジア出身のデザイナー。チームでのコンビが桂さんを中心に生きている。ジャン・ドウーセは、シャトレ座劇場のホールで開く、10数点の服だが、シャンペン会社と提携し飲ませ、ロシアからバレーのプリマドンナ応援出演で、見せようとする。オートクチュールも、昔から有名な店は、ディオールとシャネルの2社くらいしか残っていないのだが、近年は逆に諸外国や、若い人のコレクション参加が増えて賑わっている。日本にマンションメーカーという言葉があった。プレタポルテ産業発祥のころ、マンション一室のメーカーでも注文が取れ、伸びて行った。現在はメーカーとなると競争会社は多いし、組織がある程度出来上がっていないと、とても出て行けない。逆に数の減少してしまったオートクチュール業界だと、学校を出てマンションの一室にミシン1台で洋服を作って、コレクション開けば小さい投資で出て行ける可能性がある。そんな現象で40近いコレクションが、淋しかったこの季節に、パリに殺到しているのだろう。知らない新人の名前の新登場が多い。劇場の休憩サロンで開かれたジャン・ドウーセのコレクションでは、照明ライトの関係で客席の方に興味一杯。若い顔は少なく、ゴヤのカプリチョスの版画の中のスペイン老貴婦人そっくりな、凄い陰影の禿鷹のような顔ばかり。これがお客の現況だなと飽きなかったのである。
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