「新年・シャンゼリーゼ考」

 深夜が来る。テレビでは時計の針に合わせて、第2チャンネルの会長挨拶、乾杯の画面。家の外が一斉にざわついている。エッフェル塔のイルミネーションが、光を変えキラキラ、車のクラクション、個人であちこちに花火が上がる。この日のシャンゼリーゼ大通りには、旅行者や若者が集まり、警察は事故の無いよう増員して警戒体制、それでもシャンパンを路上で明けて、皆が祝う。それが青春の思い出で、楽しいのだから、騒ぎの空気が遠方から伝わる。年末までのシャンゼリーゼは、公園に100近い白い山小屋風ショップが、パリ市の公団によって建てられて貸し出され、縁日風景が呼び物であった。一歩内側に入った、世界の超一級品の集まる高級店の並びは、ガランと薄暗く、縁日、つまりフランス各地、世界のガラクタ物に近いものや、飲食ショップに、押すな押すなの人が集まって楽しそう。地方の人、子供連れ家族などが終日ゾロゾロ一杯で、地下鉄の切符一枚買うのにも大行列している光景は、少し奇妙に思える。年末バカンスシーズンも、いち早くパリを放れて、別荘で過ごすのがブルジョアの普通だから、この一か月が庶民の憧れシャンゼリーゼなのであった。
 大晦日の年越し、テラスに出る。団地ビル暮らしのわれわれ、向かい側のビルも、隣のビルも、テラスに出ている人影のシルエット、新年オメデトウと叫んでいる。意外と友人が集まって、年越しパーティをしているアパ-トの窓も多い。つまり事故の多そうなところは避ける、本物のパリジャンだ。

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