操り人形 - XI(SEVI社1831)
「チャリティラッシュ」
パリは催しの集まった大国際都市である。劇場、美術館、催し物が毎日目白押しである。今グランパレ催しギャラリーで、大きなルドン展が開かれている。他にもプログラムは一杯である。その前の4ヶ月間続いた大モネ展は、大成功で90数万人の入場者、毎日長蛇の列であった。しかし並んでまで人混みに押されて見ようとは思わないので行かなかった。平常の展示美術館の場所で見れば良いのであって、意図的にある学芸員の考えで、一堂に集めたものを見せられても仕方がない。それも二時間も並んでではもっと御免で、この90万人に入らないことに誇りを持ったのである。90万人といっても、パリの人口の3分の1強である。意外とこの考えに賛成で、私も行かなかったという文化人は多い。昨年暮れ90数才で亡くなられたが、私の大恩人のある画家は、みなのお世話をする業界の著名人であったが、現代アートには疑問を持たれ、ポンピドー文化センターには生涯一度も入られなかった。設立40年、その近くに住んで、美術家業界の大物でありながら、あれは美術とは違うと、絶対行かれなかったのである。知識のため、参考のためと誘っても、生涯拒否で終わられた。こんな生き方が許されるパリの町が好きなのである。印象派が始めて発表した130年前、嘲笑し、傘持って突き破ろうとした群集が、今は長蛇の行列で押しかける。描いた側の身になってみれば、馬鹿らしくて、踊らされて付き合って居られるのかというのが、本音である。
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