「新聞を開く」

 フランス人は薬が大好きで、産業としても消費としても薬大国、重要産業である。今一般紙面の話題なのは、昔からポピュラーに処方されていた、ある糖尿病や痩せるために使われていた薬が心臓発作を引き起こし、過去200人から5000人位亡くなっていると使用販売停止の声が上がり通ったのだ。メーカーは反論するし、訴える側は論陣をはるし、新聞種に大きくなるのは西も東も変わりない。ついにはよく使われていて疑いのある薬が77種あり、以下の12は特に要注意などという、カラーで2ページ全部使っての特集記事が現れる。何かを押さえれば体の何処かに影響の現れるのは理の当然で、うっかり医者に処方されても飲まなければよいのだが、フランス人は薬に頼り、薬好きである。パリ市内の薬屋の数の多さ、支払いについての国民健康保険の便利さにも感心するのだが、日本にあまり報道されない記事である。
  珍しく案内を受けたので、シャトレ広場にある市民劇場に行く。ここはモダンダンス専門劇場で有名である。日本の「ブトー」は、フランス人の間にファンを持っていて、専門に興業してもちゃんと営業が成り立つのである。現在日本の世界的評価と通用性を持っている芸術は、「ブトー」か「マンガ」の二つである。日本舞踊、狂言、などとなると普遍性が無いから、大使館後援とかパリ日本文化会館あたりに頼るより仕方ない。上の2つだと不要、西洋から頼みにくる位の違いがある。見たのはロンドンで活躍のブトー団だったが、昔から知人の中野希美江さんが衣装デザイン担当したのでと、自分の名前が正式に出るのが嬉しそうだったので、励ましに行ったのである。4月にも平田オリザ「銀河鉄道の夜」の衣装も担当、学生時代から下積み苦節25年、少しずつ仕事に油が乗って来た。

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