「早春のパリ」

 帰ってきて、10日間くらい開かれていた119回国際農業博覧会の最終日に間に合った。日本のジェトロが、日本食振興のブース出展、所長さんから招待状を頂いていたからだ。毎年開催され、パリ市ポルトベルサイユ見本市会場の全部を使い、大統領や首相、大臣、シラク前大統領もこの会場に顔を出す。誰は何日目に来て、何時間会場にいたなどと、皆と交歓の有様は、即日全国にニュース報道され、ワイン飲んだり、チーズをつまんだり、パーフォーマンスも大変で、農業関係者、地方は助成金の訴えに待ち構える。粗末にすると、人気と選挙に響く政治的大行事なのである。庶民サイドとしては、丁度パリ地区の学校が二週間のスキー冬休みにあたり、子供連れの家族ピクニック光景に、観光以外の、フランスの別の素顔に触れるだろう。約70万人の入場者予定だったが、今年は67万人強で少し低かった。各地方からの見事な、牛、羊、豚、馬、に手を触れて、子供たちは興奮し、農業国フランスを直接学んでいる。愛玩動物、植物、魚類もあるし、全てが集まり、一日中退屈しない。各地方からは、ワイン、チーズ、ソーセージ、特産郷土料理のスタンド屋台、レストラン、宣伝試食も賑やかなのが人気。インターナショナル館に、日本のJETROは日本食品を並べ、のり巻き寿司、お好み焼きの実演に人だかりを集め、梅酒、日本酒、つまみ煎餅で、世界に発信である。近くの韓国コーナーでは、高麗人参製品がずらりと大きく競っている。全会場産地直売もあるわけで、今年はフランス家計経済の厳しさからか、有料入場者数は少し減ったが、思いも掛けず、逆に売り上げ数字は対前年30%アップと、ほくほくでみんな各地に帰って行ったとの、後の発表であった。
 パリ三越エトワールの展覧会場では、今年は二つしか企画展が開かれないが、3月から5月まで、細川護熙焼き物展が始まった。元首相、武家大名の末裔だから、フランス人の興味津々である。数年前パリの吉井画廊で開かれた折にも拝見したが、日本各地の古い窯の色々に挑戦してみていられるのだなと言った印象だった。今回は再度の本格展だが、自身の姿を見つけ出されて、素晴らしい世界である。マットな楽の黒茶碗に惹かれたが、矢張りカタログの表紙に選んで居られた。60歳で政界引退、その明快な生き方に共感である。恋々と政界に残り口を出す、みっともなさが蔓延の日本に、一風である。もっともこれは、選ぶ方の選挙民側にも、大問題ありだと常々思っているが。

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