三つの塔
 

「新緑のパリ」

 日本は本当に活気と刺激のある町である。デフレだ、不景気だとか言われながら、今でも東京は巨大なビルがどんどん新築され、新風景が生まれて、大勢の若い人がひしめいて生活している。地方都市にもビルの建設が、新しい活気を少しだけ、お裾分けしている。大阪でも昔の「そごう百貨店」が建て直され、高さ制限が自由になり昔の倍、十四階のビルになるとか、巨大なクレーンが朝の五時から動き出す突貫工事の続行を、ホテルの窓から眺めていた。日本第二の都市大阪の、経済地盤沈下を言われているが、高いビルが建つことは、町の経済力のシンボルなのである。聖書の古代からヨーロッパの人々は、空に伸びた高い鐘楼や塔の教会堂を町の中心に建てることで、町の勢力を示した。何千年たっても、この基本的な人間の心理はかわっていない。
 緑の主義だとか、環境保護運動などと盛んであるが、人間の作る都市の生理は、より高い建物を建て、その周りに集まることで成り立っている。隣の町より1メートルでもより高く、また一本でも高いビルが数多く集まれば、そこに活気が集まるのである。その活気に寄生して、いろいろな反対運動も生まれる。活気が無ければ反対運動も成り立たない。並外れた超高い旗竿のような建造物エッフェル塔があるから、平ったいパリ旧市街も、歴史的建造物保存なんて言っていられ、そのもとに集まっていられるのだし、次々と東京湾の上までも、高層ビル群の副都心の盛り場をあちこちに生み続ける、東京の町を「凄いな」と、あきれて見て来たのである。

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