「もう年だから」その症状、実は心不全かも!あなたの心臓は大丈夫?心臓について学ぼう!
『魅力発見!おかやまなんでも調査隊』
地域の魅力は人が作る、そんな取り組みを調査し、岡山の魅力を再発見しようというコーナーです。
今回のテーマは「健康ハートの日〜あなたの心臓は大丈夫〜」です。
岡山大学名誉教授で川崎医科大学総合医療センター 内科部長の伊藤 浩さんにお越しいただきました。
まず「健康ハートの日」とは、どういうものなんでしょうか?
(伊藤 浩さん)ハートの日っていうのは8月10日の語呂合わ せで、もともと日本心臓財団がこの日の啓発活動やってたんですけれど、日本循環器学会、日本循環器協会も一緒に加わって三つの団体で取り組むようになりました。心臓について考えようという日なわけです。心臓は黙って動いてくれてるんですけど、とても病気になったら困る臓器なんですね。
心臓を注意してほしい。でも心臓疾患はなかなか警戒されていないという面もあるんですよね。
そういうことを表す言葉が「それって“年だから”じゃなく、“心不全だから”じゃないの?」。これはどういったことでしょうか?
(伊藤 浩さん)心臓の病気の中でも一番増えてるのは心不全なんです。誰でもなりうる病気、それも年をとったら増えてくる病気、これが心不全なんです。
年だからっていうと、やっぱりちょっと息切れがしやすいとか、そういった症状ですよね。結構やっぱりお年召した方は口癖のように言われる方も多いですけれども、それで終わらしちゃいけないということなんですか?
(伊藤 浩さん)そうなんです。「もう年だから」っていうのは一番便利な言葉ですよね。どんな症状があっても年だから仕方がないってなるんですけれど、本当にそれは年のせいなんだろうかと!?ひょっとしたら「心不全が原因」ではと思いを馳せていただきたいんです。
こちらのグラフをご覧ください。
こちらは
心不全による死亡数の推移予測です。
どういったところが注目するべきところでしょうか?
(伊藤 浩さん)これは日本のデータを基に岡山県が推計したものです。岡山県における心不全による死亡数の予測図です。2015年、2020年と増えてますね。岡山県の人口はだんだん減ってきてるにもかわからず、今後どんどん増えてくるんです。2035年をピークにして、その後しばらく安定状態で増えたままなんです。そして一番増えてるのは、この85歳以上の超高齢の心不全の患者さんが増え、これはとっても大きな問題になるだろうとを考えています。
だからこそ年のせいにはせずに心不全を疑おうということなんですね。
どういった時に心不全だと疑ったらいいんでしょうか?
(伊藤 浩さん)心不全というのは、体動かしたときに息切れとか、足がむくんだとか、そういうようなちょっとしたこと、年で起きてきた変わったことを心不全として考えていただくといいかなと思うんです。
続いてのグラフは、心不全患者のうち認知症の患者の割合予測です。
認知症患者の割合が高くなっていくんですね。
(伊藤 浩さん)この黒い線、これは心不全の入院した患者さんにおける認知症を持ってる患者さんのパーセンテージです。そうすると最終的に心不全で入院された患者さんの3人に1人が認知症ということです。それも超高齢認知症です。
(伊藤 浩さん)心不全で入院を繰り返すんです。1回入院したらどれぐらいかかると思います?
(伊藤 浩さん)まず100万円はかかります。ただ保険がききますので、実際の患者さん負担は低くなるんですけど、突然入院しますから、経済的な負担とともに、ご家族に対する負担、社会的負担、精神的負担、とっても多い病気なんです。
(伊藤 浩さん)ただ心不全は予防ができます。これがポイントです。
どんな症状がでてきたときに疑えば良いのか?ということなんですが、こちらです。
(伊藤 浩さん)これ心不全の症状です。これあるあると思ってる人は結構多いと思うんですね。先ほど言いましたが、疲れやすい、だるい、しんどい、あと動機息切れですね。それから夜間頻尿、これよく前立腺肥大で神経膀胱だと言われてることがあるんですけど、ひょっとしたら心不全と思っていただくことも大事だと思います。他にもむくむですね。そして一番悪いのは夜息苦しくて目が覚める、そして座ると呼吸が楽になるです。
ちなみに血糖値みたいな数値で判定する方法っていうのもあるんですか?
(伊藤 浩さん)はい。実はあるんです。今日、一番知っていただきたいのは、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチドの値)という数字で心不全がわかるということなんです。
(伊藤 浩さん)れを心不全の重症度を反映するために心不全であるかどうかの診断にも使うことができるんです。
その正常値、異常値の目安、こちらになります。
(伊藤 浩さん)この正常値、異常値の目安と書いてありますが、この緑のところが重要なポイントで、(BNP、もう一つ、NT-proBNPで測られてる施設もありますけれど)18.4BNPを絶対超えないということです。
それ以下であれば大丈夫?
(伊藤 浩さん)超えたら何らかの心疾患を持ってるサインなんです。そして先ほどの症状があって、例えばBNPが40を超えてくると、その症状は心不全の可能性がある。そして100を超えたらその症状は確実に心不全であるということです。
このような話をしても、BNP値の上が50、60でもケロッとしてる人がいるっていうんですが、それはケロッとしてて当たり前なんです。
その人は、例えば体を動かしてないんです。心不全というのは心臓に余力がなくなる状態ですから、体を動かしてみて一定以上の運動して初めてわかります。じっとしてる人ってなかなかわからない。ですから、この値で診断していく訳です。
この数値って健康診断で調べないですよね?
(伊藤 浩さん)はい、一部の健康診断では調べてるところもありますけれど、通常は心不全を疑った場合、どこのかかりつけ医でも血液検査で測っていただくことができます。
ということで、岡山県では心不全や心筋梗塞の医療提携を進めています。それが
「安心ハート手帳」です。
これがあればどこの病院でも、その状態をドクターが把握してくれるというものなんですが、伊藤さんこれはどのように活用されているんでしょうか?
(伊藤 浩さん)これは日本で岡山県だけなんです。冠動脈疾患いわゆる心筋梗塞も心不全もですね、まずは急性期病院で診てもらうんですね。そして、その後からかかりつけ医、あるいは地域の病院に患者さんが帰っていくわけですが、急性期病院の病態、そしてどのような治療をしていたか、そしてどのような治療を継続していただきたいか。そういうことをいろんな地域で同じ治療を継続していただくための治療システムです。岡山県どこでも同じような治療を受けることができるそういうシステムにしています。
ただし誰でももらえるんじゃなくて、病気をして急性期病院に入院した方だけのものですが、これを見たい人は岡山県のホームページからダウンロードすることは可能です。
是非、気になる方は確認してみてください。
さて、8月10日の健康ハートウィークですが、いろいろなイベントが行われます。
(伊藤 浩さん)心臓をぜひ考えていただく機会にしたいということで、健康ハートの日のイベントを作っています。
他にもランドマークのライトアップなんかも行われるんですよね。
心臓に思いを馳せてもらおうというライトアップ、ピンク色に染まるようでして、今年は8月10日に岡山城もライトアップされます。日没から深夜の12時まで実施されます。ぜひ皆さん見に行ってみてください。
心臓というのは、本当にもくもくと働いてくれている臓器なんですが、実は死因が2番目なんです。そして心不全っていう方が非常に増えてます。
だけど予防が可能なんです。先ほどの症状が出てきた段階でBNPを図っていただいて、もし心不全のサインがあれば、そこからきちっと治療し生活習慣を改めれば心不全が発症せずに済むわけです。
そういうことで心臓を意識していただければと思います。