9月25日(水) よる8:00~8:55
「人薬」~精神科医・山本昌知~
長く、精神科医療に不可欠とされてきた「閉鎖病棟」。
今から60年前に疑問を抱き、病棟から鍵を撤去した精神科医がいた。
山本昌知さん。岡山県和気町出身(88)。
岡山大学医学部を卒業し精神科に入局。
医薬品も少なく、興奮する患者を落ち着かせる為には電気ショックのような非人間的な処置も容認されていた時代だった。
広島県尾道市にある精神病院の副院長に赴任した山本さんは、ある日、患者に殴打され言い放たれた。
「わしらはお前に従っているのではない。お前が腰にぶらさげている鍵に服従しているだけだ」
衝撃を受けた山本さんは患者とある賭けをした。
「閉鎖病棟を開放する。出入りを自由にするかわりに問題行動を起こしたら再び閉ざす」
当初は職員の猛反発にもあった。
しかし結果は…。
患者同士で無断離院に目を光らせ、注意し合い、規律は守られたのだった。
「精神疾患は特別な人たちの特別な病ではない。異常なのは精神医療の体制なのではないか」
やがて、山本さんは患者を病院から家族のもとに帰し、地域の中で回復させる独自の臨床作法を確立してゆく。
岡山県精神衛生センターの所長を25年間つとめ、退任後も診療所を開業。
岡山の、ひいては日本の精神医療の開放に身を捧げてきた山本昌知さんの功績に迫る。
(写真=精神科医・山本昌知さん)