「東洋と西洋」

我が家の近くにユネスコ本部があるが、1999年から2009年までの10年間、日本人で第8代事務局長を務めた松浦晃一郎氏の80才傘寿の記念会が一日開かれて、招かれた。この事務局長の大きな功績は、政治上の不満でユネスコから離れ、永らく年会費も払うのを拒否していた、アメリカやイギリスを引き戻したことだった。現在は世界遺産とか文化遺産のお墨付きを発行して、ポピュラリティ獲得を仕事にしているが、まああまり理解されていない国際機関である。それでも先日のパレスチナ国をメンバーに承認したことに怒って、イスラエルはユネスコの年会費の支払いを拒否している。日本だけは太平洋戦争敗戦後、第一号初めて独立国として加盟を認めてくれた国際機関が、このユネスコだったので絶対的善として受け入れ、ずーっと批判的でない。昨今は観光の種に世界遺産のお墨付きを欲しがる地方自治体などがあるから、その方面で有り難がられている。

傘寿を祝う会は、朝10時に始まり、終日旧職員の挨拶や、昼食会、思い出の討論会、コンサート、締めくくりのカクテルパーティの午後8時まで、終日元事務局長氏をたたえる行事で、国際機関の社交界とはこのような物かと思わせる、華やかな一日だった。

松浦元事務局長、その前は日本のフランス大使が長かったが、事務局長就任の日、「自分は大使の時、職員に簡潔に短く要領よくと言っていたのに、このユネスコに来ると自分の挨拶が短すぎると忠告されるんだ。もっと長く引っ張ってやってくれないと困ると言われるんだ」と勝手の違いにぼやいていられたのを、思い出した。国際社会には引っ張って弁論が売り物の人物の多いこと、「男は黙って」では通用しない。安倍さんのような言い逃れも、日本人種としては嫌だが、外国ではそういう習練を積んでいるのである。

2018年6月11日 赤木 曠児郎

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