「2018年3月の近況」

2月から5月半ばまで、国立ギメ東洋美術館で「大名展」というのが始まっている。招待日があったので出席してみたが、美術館本館、日本別館、東京宮殿(旧国立近代美術館の建物)、3カ所の会場に分散して、全体で41体の、日本の大名家から出た鎧兜が展示され、ヨーロッパの蒐集家が集めていたものである。完全な状態で揃ったまことに見事なもので、手入れも行き届いていて、色も残り、飾りの細工も完璧、見たことのないほどの逸品が揃って並んでいる。附属の陣羽織、軍配、武具も豊富に並び説明され、圧巻で、知人の女性に「素晴らしい企画だから是非見て来なさい」とすすめた。早速出掛けたようだが「これを着て戦って死んでいたと思ったら、会場にいられなかった」と逃げてきた。女性にはそういうものかも知れない。大名家が持って居た携帯防空壕のようなものだから、実際戦闘に使われた物とは違うよと言ったが、なるほど面頬など黒く重々しく、怖い気持ちも分かる。しかし江戸時代の工芸の粋の飾り物で、意匠、細工、素材、西欧人の目を奪う見事な水準の品物だから、明治の廃藩置県後に、大名家には不要になって放出され、コレクターができ集められていたのだろう。金の葵のご紋の刺繍が入った、鹿革の狩り用手袋も一点並び、水戸黄門を思い出してしまった。

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