セーブル門大通り
「新しい年が、また始まる」
12月パリ日本文化会館で、落語と浮世絵の夕べという催しが二夜開かれた。フランスにも落し噺はある。芸術家の夕食会のあとなど、つぎつぎ立って話のうまい人が落し噺を披露、みんな腹を抱えて笑う。落語のようなものは、フランスにもあるのである。当夜、三遊亭竜楽さんという、7か国語で落語を演じれるという人と、浮世絵を大スクリーンにグーンと一杯に拡大して見せる、美術館学芸員牧野健太郎氏の二人コンビの夕べで、北斎や広重江戸百景を選んで映す夕べであった。普通浮世絵は40×50センチくらいのもので、木立があるな、人が居るなくらいで見過ごしてしまうが、ここまで拡大されるとハッキリと彫り師の職人さんたちが、当時の風習が分かっていて、すべて見分けられるくらい彫り込んでいるのを発見する。亜流印象派の絵みたいな、いい加減に筆誤魔化しはしていない、単なる影や調子でないのである。魚屋さんの天秤桶の魚の種類まで、知って居て彫分けて表現されているのが改め分かり、当時の風習を説明されると、興味深々引き込まれてしまい、誇らしく思った。以前に広重江戸百景の復刻版作業の紹介を、同じパリ日本文化会館で開いたことがあったが、この点その時は、絵として見ていてあまり気が付かなかった。ここまで大画面のIT時代の仕事ならばこそと、感動的だった。開館25周年になるが、これぞベストワンの講演会と思ったのだった。
2017年1月10日 赤木 曠児郎
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