グルーズ通りの入り口
「観光立国の時代と言うが」
「ナポレオン」と言う名前のブランデーがある。フランス語では産地の名前を取って、英語のブランデーはコニャックと呼ばれ、食後に寛ぐ時に口にする強い蒸留酒である。1970年代、日本人の海外旅行が流行になり、フランスに押しかけた時代、お餞別にお返しのお土産は、ナポレオン、香水、ライターが最適となって、みなが競って買い物をして、持ち帰ったものである。その中でもナポレオンの像を商標にしたクールボアジエー社のものが、一番有名だった。日本中のバーで、巾を効かせた。「サザエさん」や「意地悪婆さん」の漫画でも、お酒のナポレオンをテーマにしたものが沢山ある。その酒蔵の町からミテラン前々フランス大統領は生まれ、いまでは生家やお墓も観光名所である。クールボアジエー社のお城のブチックで、今年の夏の観光シーズンの始まりのイベントに、わが作品を10日間、8点貸出し展示を頼まれ、前夜祭パーティがあって行ってきた。あのナポレオンの会社に展覧会で行くのだと、パリに住む現在の若い日本人に話しても、キョトンとしていて、今はシャンペン・ワイン・グルメに関心でも、コニャックナポレオンを、もう誰も知らないのに驚いた。長谷川町子さんの漫画でも、通じないわけで、半世紀に近い時の流れを、つくづく感じた。
2015年8月13日 赤木 曠児郎
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