昔のパリ
「3月は腹の立つ季節」
JAPAN EXPO(ジャパンエキスポ)、名前は同じでないがフランスの真ん中あたりにあるトゥール市で、2月下旬のウイークエンドに第一回展をひらくのに招かれた。この手の催しのスタートの元祖は、毎年パリ・ドゴール空港の近くにある見本市会場で開かれているものだが、20年近くたって大成功になり、今では4日間に20万人の入場者を集める。各地の地方都市見本市会場にも伝播して、似たようなものがあちこち開催される。日本のアニメ・漫画出版文化のブームを基礎に発達した行事で、ビデオゲーム、キャラクター人形、刀や武器の玩具、キモノ、コスプレ、アクセサリー小物、ラーメン、たこ焼き、よくもこれが現在の日本発の文化なのだと思われるものが120社、トゥールにも出店していた。日本カルチャーの最前線で、フランス人経営で、日本人が働いている形態が目立ち、伝統芸術、芸能などは陰をひそめ、ド派手なイベントに、人々が熱狂、楽しんでいる。17世紀に社交界の人々が、ベニスや宮廷で仮面舞踏会を楽しんだ伝統の、現代庶民版の感覚だろうか。地方なのに有名漫画キャラクターのコスプレ姿が、ここぞとばかり集まって来ているのに驚かされ、3日間で1万3千人の入場者、行列騒ぎの出来るイベントに市側は大成功。縁日のように次々と、日本業者がヨーロッパ各地をまわるのだろう。トゥール市は日本の高松市と姉妹都市であるのも強調される。現代は世界共通グローバル均一文化でなく、地方の固有特色が売り物である。日本の航空会社の広告が、あれほど嫌がって避けていたフジヤマ・ゲイシャの日本の図柄、それが堂々と大手を振ってパリのメトロ広告や、観光宣伝の大ポスターにまで登場の時代に、考えさせられる。
2015年3月11日 赤木 曠児郎
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