「3月は腹の立つ季節」

 3月、いろいろな結果が発表されるが、フランスで一番トップの成績の企業は、LVMHでルイビュトン鞄屋グループ、二番がAXAの保険、三番がロレアルの美容化粧品グループである。石油、自動車、飛行機などを押さえて、年度収益の決算報告がされている。豊かに富む者は貧しい人たちへの施しが、社会維持のための義務と教えられ古来の知恵、ノブレス・オブリージュ(位高ければ、徳高かるべし)がフランスの諺の教えだが、税金で引かれるだけでなくいろいろなところに施しをして、ますます名前が知られる。
ルイビュトン鞄屋グループは財団を作り、昨冬大きな現代美術館をブーロニュの森に建てたが、50年間運営後パリ市の所有物になる。初年度70万人の入場者予定が、最初の4ヵ月で既に35万人を越え、好調な滑り出しである。風変わりな、風を含んだ帆のような屋根、流行デザインの建物で人目を引き、発足の中身は現代美術と呼ばれるものの展示。大きな空間を利用して、光だけの線の真っ暗な部屋とか、巨大な画面に色を流しただけの作品、人を吃驚させて巨大なら良いのである。ルーブル美術館に行くと、小さな一点でも世界の名作で、そのようなものが所狭しと壁一面にかかり、何百年もかけて集められた重味がせまってくる。ルーベンスやベラスケスの部屋は、巨大な画面をバシバシ描いて、王様の需要に答えたのだろうか。新美術館には時の蓄積と、まだまだ巨大な資金が必要である。とにかく今、新しい美術館を出発させるとなれば大きな現代美術と呼ばれるもので、壁面、空間を手軽く埋めなければ仕方ないのだろうと、部屋から部屋を次々と意外に早く歩いて出てくる。中味は薄いが、テラスでブーロニュの森の日光浴、時間を過ごすのには快適であった。

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