岡山市出身でフランスのパリを拠点に活躍する画家、赤木曠児郎さんから月に1回程度「パリ通信」を送っていただいています。

2012年10月11日

「帰ってきたパリ・2012秋」

 9月始めに出発して、京都、大阪、札幌、岡山を往復していたのだから、本当に長い滞在だった。日本は北海道までも異常に暖かくて、10月に入っても半袖の方が、心地よい日々だったが、パリはずーっと異常に涼しくて、もう室内に暖房も入っているし、雨も多かった様子で、テラスの植木も緑のままで、何時ものように葉がぐったりとしていないのでホッとする。もう黒の多い、冬装束が目立つ。  「日本に帰っていた」と言うと、パリジャンの皆が一様に、「食料品は大丈夫だったのか?みんなはどうして暮らしているのだ?」心配をしてくれる。放射能の汚染で牛乳も飲めないとか、フクシマ、津波、災害のニュースは、連日、欠かさず日本からの話題にされ続けているのだから、日本のイメージとして、一般に浸透しているのである。日本の都市の何処に行っても、レストランや食べ物の店々がふんだんに、軒並みに並び、話題の店になると行列が出来ている。衣料の店や、化粧の店、普通のフランス人は手にすることのない欧米高級ブランドの独立店舗までが、競って並んでいる有様をみると、こんな贅沢、潤沢な消費王国は、世界中どこにも無いような気がする。パリだって歴史建造物は多いけれど、質素な町のような気分になる。現在の、あの普通の日本の生活は、全然伝わっていないのである。その上に日本では朝になると、自分の家の前は気をつけて掃き掃除する人もよく見かけるし、日本のゴミの無さに慣れると、パリの舗道の上の汚さは、これは対照的である。50年前、パリに住み始めたころは、この点は全然逆で、欧米の都会は清潔で綺麗で、国道、ハイウエーは整備され、日本はまだ人手が回らず、汚れっぱなしの頃もあったのだから、すっかり逆転している。
 

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