「秋の風鈴考」

 なるほど、物には限度と、知恵があるものだと理解して、古いのも同じように直して、3個並べて吊るした。窓の外に吊るしても、二重ガラス窓では意味がないし、近所にも迷惑だから、室内の窓の内側に天井から吊るしたのである。この窓は暑い日には開いて、風を通す窓である。ヨーロッパの家では、暖房は必需品だが、室内冷房は不要なのが、普通の気候で、暑いと思われるプロバンス南仏地方でも、朝4時頃起きて家の窓を全開にして、朝の冷たい空気に入れかえる。日の昇る頃全部閉めて、日中の暑い空気や、直射が入らぬ様に緑色の鎧戸を、きっちり閉め、内部で空気の温度を上げない様に、ひっそりと過ごすのが、こちらの暮らし方で、石造りの家だからこれで持つ。
我が家にもう一つ、チリンチリンと音を立てる呼び鈴と言うのだろうか?鉄火箸が二本、アトリエの出入口に吊るしてある。これは部屋に出入りの度に肩がちょっと触れても、良い音を出す。姫路の兜造りの明珍さんの火箸である。個展にお伺いした折に、奥様がチリーンと銀色に光る火箸を鳴らして聞かせて下さったのだが、刀にする玉鋼を打ったもので、注文で作られ、楽器としてオーケストラに使われる物。あまりに良い音なのだが、二本の光る鋼火箸が40万円では、考える。我が家は交響楽団ではないから分相応、並みの鉄火箸であるが、時たまの音は、ハッとして良いものである。
 

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