休日の新聞キオスク
「春爛漫」
アパートの隣にパン屋がある。40年近くなる昔、引っ越してきたころ、老夫婦の経営で、猫がパンの上を歩いているのを見て、絶対に買わなかった。以来3代くらいオーナーが変わり、店構えも田舎風、本格手焼き風、比較的広くて大きい店なので、商品の種類を増やし、ケーキ、ボンボン、チョコレート類まで工夫して並べるのだが、人が入らなかった。近年また新オーナーに変わり、モダンな現代デザイン調に改装して、商品の種類もしぼり、スペースを大きく開け、数脚椅子テーブルを窓際に据え、セルフサービスの飲み物の器械も置いて、スターバックスのような感覚のパン屋にした。人が入りテーブルで人が座り、焼き上がるパンも行列して買うようになって、昔を知っているから、こちらが驚きである。商売の繁盛、不振なんて、矢張りこちらが常に工夫して、時代に合わせて変化の努力が問われているのだと、ミシュランのページを、このところ飽きずに捲っているのである。パリ市では、この建物はこの業種と、市内の営業権が決まって配置、配分されているから、勝手に店の業種や分野は変更できない。それで以前に絵に描いた場所なぞ、興味尽きないのである。
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