岡山市出身でフランスのパリを拠点に活躍する画家、赤木曠児郎さんから月に1回程度「パリ通信」を送っていただいています。

2010年6月12日

「ミドリ・ビオな初夏」

 10日ばかり、用事があって九州に旅行をしてきたのだけれど、口蹄疫のニュースも、首相退陣と同じくらい多かった。数年前フランス南部でも発生したが、完全に集落を包囲、憲兵隊が出て白服に身を固め、住民の出入りも自由に許さない完全隔離。まるでSF映画の核爆発放射能対策みたいで収めた。日本のは、ワクチンによる対策位で、とても生ぬるく、これで拡大が防げるのか、フランスの記憶からするとまことに頼りなく映る。もっともそこまでやられると、牧畜業以外の住民の生活には支障を起こすから、日本では生活問題だ、経済問題だと、他は収まらないだろう。衣服に付いたり、人間の移動によっても広がるので、本来徹底的に必要なのである。
 いまパリに、700軒の「鮨+焼鳥」専門の日本料理屋が発生し、ブームである。日本人の目から見れば、この両者同一店で共存できるはずがないし、本当の日本人鮨職人の店は、実質30軒もない。東洋のエスニックレストランというと、パリ中どこにでもあった中華料理店が、中国ブームと共に本格競争にさらされて、人の入らない店はサッパリ。にわかに日本民芸店で法被や暖簾装飾を揃え、新流行のこちらに目先を変え、転業したのである。郊外の工場から鮨、マキなど出来上がったものが納入され、安く食べられ、中華料理の出来合い食品なども冷蔵ケースに並び、温かいのがよいものは、電子レンジで温めてくれる。要はマクドナルドの東洋版みたいなファストレストランが受け、「鮨」とあると、油やバターを使わず、肥らない健康食ブームで女性が入るからそうなったのである。その他、宅配ピザと競争で、宅配「鮨+焼鳥」メニューの、結構お金の掛かった豪華カラーパンフレットが、各家庭、事務所の郵便受けに、連日のように競争で入っている。事務所での仕事中の昼や、夜の家族パーティーに、目先のかわった趣向で、セットメニューの注文をする人もあるのだろう。魚の種のベースが、養殖鮭ばかりなので、大体見当がつく。

page1/3