岡山市出身でフランスのパリを拠点に活躍する画家、赤木曠児郎さんから月に1回程度「パリ通信」を送っていただいています。

2010年5月11日

「緑の季節・印象派の島」

 カンヌの映画祭の始まる季節だから、映画の話題が多い。創設されてから63年目だそうだが、すっかり定着して世界的な行事で、南仏カンヌ市のお宝である。西仏の同じような観光海岸ドービル市が、追いかけて何とか映画イベントをと、投資するのだが、後追いは今ひとつ。ドービル市は競馬用の馬の競売で、絡ませて秋口にアメリカ映画祭を作り、ハリウッドから有名スターを呼んで、少しだけフランス国内の話題になる。しかし「映画祭」というと、5月のカンヌ市と定着している。それに先がけて、同じ頃にパリに誕生し65年になる「外国特派員記者会(APE)」も、メンバーの映画ファンサークルが、映画批評家たちのための「金のペン賞」を出している。5月5日に今年の授賞式があったので出席してみたが、業界50年、映画批評雑誌編集長も長く、50冊以上の映画の著書のあるマルセル・マルタン氏に、トロフィーが贈られた。今はもう隠退で自宅静養だが、夫人が日本人で、日本に向けて映画演劇記事送稿の今泉幸子さん。映画夫妻で、思いもかけず嬉しい偶然だったが、久しぶりにお目にかかった。特派員記者会では、映画は20世紀の生きた記録であるとして、色々な時代を象徴するような、話題の映画にもトロフィーが出されている。今年はコロンブスの生涯を描いた「1492」とか、エディット・ピアフの生涯「ラ・モーム(日本版は愛の賛歌)」といった具合である。映画はフランスの発明である。
 近所のユネスコ本部の旗竿に、10日ばかり日本の鯉幟りがひるがえっていた。今年はユネスコ「世界子供の日」に協賛事業になったからである。企画する人があり、もうパリの5月鯉幟り行事も8年目、観光庁とか大使館も応援している。百数十ヵ国あるユネスコ加盟の国の数だけ立っている旗竿全部が鯉幟りでうずまり、平常は諸国の国旗なのに、近隣や通りがかりの人は何事かと驚く。中国のシンボルが龍で定着しているから、日本は鯉で定着させるのも悪くないかも知れない。記念のユネスコ大ホールでのオープニングコンサートに、「なまはげ里神楽」の太鼓演奏があったが、大蛇が出てきたのは少し残念だった。日本文化は、中国の龍のやっぱり亜流かと、外国では誤解を生むからであり、折角の鯉なのである。その日が上海万博オープンの日でニュースが埋まっているから、余計に今年は霞む。

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