「日本を旅行してきたこと」
日本に比べると、フランスは観光大国であって、世界からの観光客の集まる定評があり、観光産業は自動車産業などよりも、はるかに規模も、雇用人口も、上回る産業なのである。もうズッと以前に40年も昔、チトーの支配するユーゴスラビアに、観光視察団のジャーナリストとして、招かれたことがあるが、当時エーゲ海岸の開発をして、観光産業を起こそうとしていたこの国では、大学を出て一番の就職口が観光産業であり、観光学科があり、そこに就職できるのがその国のエリートなのであった。中国に団体旅行した折にも、あまりにガイドのフランス語が巧みなので、フランスに留学したことがあるのと聞いたら、全然国外に出たことは無く、養成されているのであった。
国内の旅行業とは違った、国際観光の振興は違った努力が必要で、日本は小泉前々首相の提案まで、殆どこの分野に手をつけてなくて、成り行きまかせだったと思う。長い間、日本からフランスを訪れる観光客は、フランスから日本を訪れる観光客の10倍の比率、日本を訪れるのも、ビジネス、学会、研究の招待のついでが主で、純粋な観光は、ほとんど対象になっていなかった。日本の観光会社の仕事は、日本人の観光客を集めて、外国に送り出すということに集中していて一方交通。何とかこの不均衡を解消しなければとの努力で、この3年の間に対フランス、7対1になったといわれる。日本に東洋の国々からの観光客が多いが、西欧社会から日本に向けてとなると、日本の現地観光会社の実力では、仲々できないので、珍しいケースだったのである。
私自身、フランス人旅行団の一員として参加する体験は、フランス人の生活、考え方を理解する最高の学校であるから、平常つとめて機会を逃さないようにしている。日本人の集団で歩いても、これは便利ではあっても、学ぶところは半分である。
美しい景色、みやげ物、食べ物で、人は旅行をすると、日本では思われているが、わざわざ外国から人の足を運んでもらうためにはまず文化で、土地特有の歴史や、文化財がなくては、絶対に来てくれない。そして外国語のできるガイドさんの養成は、何よりも大切である。
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