ポルト・ド・ベルサイユ見本市
会場入口
 

「秋」

 三億円相当の広報予算が使われ、勿論紙面もふんだんに買い切られているが、アメリカ大陸からは沢山の専門ジャーナリストが招待されていて、このアンチーク見本市にとってアメリカは最大の顧客である。アメリカの美術館などからも、アメリカ文化の故郷であるヨーロッパに、世界最高のものを求めて出掛けてくる。
 昔はパリのオート・クチュール・コレクションにも、ニューモードを求めて年二回、同じように人々が足を運んで来ていたが、ほんの五軒ばかりしか存続できなくなって、こちらは火も消えたも同然。カバン、小物グッズ、香水、化粧品のライセンス・デラックス商品の程度で、人々の関心が薄れた今、アンチークは依然として真似の出来ない、唯一の存在で輝いている。昔の宮殿やシャトーにあわせて発達した品々は、大き過ぎてボリュームが違うから、日本の家屋には手におえない分野で、入れ物が無い。日本のアンチークは、焼物、小物の飾り物で市場ができているが、欧州のテーブル、椅子、大理石の彫刻調度、鎧兜、壁掛け絨毯、数百年もたったり、何をとってもドッシリと大きいので、日本の木の床や壁は抜けてしまう。その上現代のビルは天井が低く、空間も小さい。日本人の蒐集家が集まれるのは、スイスで開かれる時計宝飾見本市だろうか。  

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