新聞キオスク
 

「黄色」

 今年はコンクールはなくて、優勝者コンサートの年だったが、フランス国立交響楽団をバックに、60周年記念演奏会だった。昨年は日本人のヤマダ・アキコさんが16才でバイオリン優勝、一昨年はピアノにドン・ハイック・リン氏、韓国人の優勝者だった。いろいろふくめて九名の過去の入賞者が招かれて、演奏披露されたのだったが、1996年に同じくバイオリンで優勝している日本人、カシモト・ダイシン氏が、19世紀のフランスの作曲家ラローの、スペイン交響曲の最後の部分を熱演した。サラサーテのために作曲した複雑な技巧の曲なのは、見ていても分かる。段々と進んで、汗いっぱい飛び散るのが見えるほど。ふと背景をみると、大オーケストラの人たちも全員熱演、コントラバスまで必死で腕を動かしている。そしてみんな真っ赤に、上気して演奏。熱の入るほど赤くなる。ところがこのカシモト氏、顔色は黄土色、熱の入るほど、どすんと沈んだ黄色になるのである。平常、地下鉄の中で見る人間の肌の色、裸のモデルを描いても、マネのパステル画のような、純粋白とピンクだけの肌の人はいない。黒人は別として、大体差があまりなく、結構黄色を入れないと、顔や肌の感じが描けないもので、何処に白色人種、黄色人種などと言われるのだろうと、思っていたのだが、なるほど熱気や怒気になると、一方は赤鬼のようになり、上気してこちらは黄色になるのかと、妙な理解をしたのだった。

2003年11月17日 赤木 曠児郎  
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