会場の模様
豊田工業高等専門学校元教授幸田 正孝
慶応義塾大学准教授大久保 健晴
東洋大学教授岩下 哲典
津山洋学資料館元館長下山 純正
パネルディスカッションの模様
第10回シンポジウム実施報告
公益財団法人山陽放送学術文化財団は2月23日(金)、岡山の蘭学の源流とその拡がりをテーマに、シンポジウム「岡山蘭学の群像10 近代日本を拓いた蘭学者たち」を、岡山市北区の山陽新聞社さん太ホールで開いた。蘭学シリーズの最終回となり、会場は大勢の歴史ファンで埋まった。
日本の近代化を牽引してきた岡山(津山)の蘭学は津山藩医宇田川玄随(1755~1797)に始まるが、今回は日本初の西洋内科学を切り拓き発展させた玄随・玄真(1769~1834)親子、津山藩からオランダに留学し日本の法体系を確立した津田真道(1829~1903)、津山藩出身でイギリスに留学し明治屋を創業した磯野計(1858~1897)を取り上げた。
シンポジウムでは、豊田工業高等専門学校元教授の幸田正孝さんが「宇田川玄随・玄真」親子の、慶応義塾大学准教授の大久保健晴さんが津田真道の、東洋大学教授の岩下哲典さんが磯野計の経歴や業績についてそれぞれ講演した。
パネルディスカッションでは、津山洋学資料館元館長の下山純正さんがコーディネーターを務め、講師3人とともに、津山藩がなぜ日本の近代化をリードする人材を数多く輩出できたのか、その理由と特異性に迫った。この中で、幸田さんと岩下さんは「津山藩は玄随らの出版に対して助成金を贈るなどしており手厚い助成が新たな試みの励みになった」「能力がある者を支援するという意識が藩の中に根付いていたのだろう」と分析した。また大久保さんは「早くから海外へ留学するなど美作人は進取の気性に富んでいた」と指摘し、下山さんも「幕府の親藩だったため情報も早く入っただろうし、自由な取組みができたことが大きく影響した」と分析した。
シンポジウム「岡山蘭学の群像」は、鎖国のなかで日本の近代化を牽引してきた岡山ゆかりの蘭学者をテーマに、その業績と最新の研究の成果を討論し合うシリーズ・シンポジウム。平成27年4月から3年間、10回にわたって開催してきましたが、今回で一応の区切りとします。
「郷土の先人」をテーマにした次回シリーズは『慈愛と福祉の先駆者たち』。岡山ゆかりの福祉の先駆者の足跡をたどり、その理念や事業、そして継承されるべき福祉文化を、新たな研究の成果とともに紹介し、併せて今日的課題をも探っていく内容です。
第1回は平成30年6月7日(木)。「三千人の孤児、父となった男 石井十次」と題し、「児童福祉の父」を取り上げます。第2回は「大原孫三郎」を取り上げます。講師には、『岡山蘭学の群像』と同様、その分野のエキスパートをお招きする予定です。新シリーズにもご期待下さい。