「マスク」

バカンス季節にコロナに自粛用心しろといっても、3月から7月までの隔離政策で、若者にはエネルギーの欲求不満が溜まり切っている。経済事情で出られずパリに燻っているのは不満の塊、何が起きるか分からないから不気味である。とにかく南へ南へで、バカンスの夏を発散してくれないことには治まりがつかない。観光産業も大事な産業で、大臣まであるこの国では、夏場バカンス期の3割が外国人旅行者からの売り上げと言われる。今年はコロナで外国にも出られず、外国からの観光客も期待できず「フランス人はフランス国内でのバカンスを」のキャンペーンで乗り切ろうとして、また2ヵ月が休養で過ぎて行く。「コロナで3月4月期春休みは、もう全滅を予想していましたが、7月に入り6~7割の売り上げに戻り何とか行けそうです」と、地方の観光業者がインタービュで答えていた。幸いなことにみんなバカンスだけは、止めないのだ。

「冷房もないの?」と聞くのは、全国すっぽりとすっかり空調機械でおおわれてしまった日本人である。フランスでは昔から必要なかったのだから無いし、厚い石造りの建物の構造が簡単には入れられないのである。現代建築家の建てるペラペラのガラス張りビルでは、冷暖房必需品で設計に組み込まれているが、部厚い石造りで歴史のある建物では必要がなかったし、まだまだ処理方法が確立されていないのである。その代り昔から暖房設備は完備しているのがヨーロッパだったので、一日二日異常に暑くても、翌日は涼しく戻ってしまうのが普通だったのに、とにかく猛暑日が続いているのである。

2020年8月10日 赤木 曠児郎

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