「この暖かさ、普通じゃない」

フランスの警察官の過剰な反応が、暴力として問題になっている。その結果、デモのたびに「ミニレポーター」という種族が発生し、素人でも現場に居合わせて携帯電話を持って居て、警官の暴力行為の証拠写真を、ビデオ記録にとればビジネスになるらしい。テレビニュースにも買ってくれる。一方怪我をしては大変だし、成り手がなくなるから、近年の警官隊はまるで劇画の宇宙人みたいに黒い鎧兜でおおわれて、力強い恰好を、それも税金で補給されている。対する庶民は黄色いナイロン一枚のチョッキ、ニュースになって流れれば、画面は怒(いか)つい強権が、か弱い庶民を押さえつけている構図になってしまう。警察内部監査でも過剰行為が問題になっているとの報道。先日ペシュナールさんという、30年間警察に働き総局長まで務めた人の「若い警察官への手紙」(タランディエ社)という、自伝と忠告のポケット版の本の、出版紹介コンフェランスに出てみた。退官後に著述活動と政治科学学院の講師などをされていて、国家安全の専門家である。国家警察、憲兵隊、市町村警察、いろいろと制度があって外国人には説明が難しいが、両方側からの話を聞いてみないことにはとにかく何ともいえない。しかし心理的に頑丈な鎧兜に身を固めれば、上から押さえつけるような居丈高な気分に、若い警官がなるのも仕方がない。ボクシング衣装みたいに両方同じであれば、まわりから見てどちらが悪いか判断も付き易いのだろうが。昔から警官は避けろの気分が、パリ庶民には染みついている。それでこの本に興味をもったのであった。

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