「黄色いベスト」

フランス人も英語を使うのが、近年はエリートのシンボルのようで、話せるところを見せたがるのである。近くに国際政治研究所という、フランス外務省のお墨付き機関の事務所があり、国際問題のセミナーや、討論、会誌レポートの発行を業務にしている。フランスの政府外郭機関だからフランス語で当然と思うが、近年は英語ばかりで開催されて、招かれる諸外国の講師の言葉の関係もあるらしい。日本国も対外キャンペーン窓口の一つにしているようで、時々日本の政治がテーマの機会もある。先日もジャポニズム2018の事業の一環か「新しい日本とフランスの外交関係戦略」セミナーが半日あった。大使が開会の挨拶をし、フランス外務省から担当も出席の本格のものである。日本からは大学教授の専門家や、防衛相の武官まで講師で送り込まれてのプログラム。しかし出席して思うのだがフランス人の英語も、日本人の英語も私には全然頭に入ってこないのである。IT時代で側の大きなスクリーンに、講師が用意してきた文字で見出しが出るから、何とか追って行ける程度で、自分の英語レベルが低いのだろうと諦める。中に珍しくたった一人フランスの政治科学院教授に、通じる英語の人がいた。もうこの先生、お猿の百面相みたいに顔をゆがめ、しかめ、抑揚を大袈裟にアクセントつけるから、通じたような気分が出るので、ああ英語とはこういう言葉なんだと思った。これに比べると、日本人の英語も、フランス人の英語も、それぞれ自国語の関係で平坦でアクセントなく、正直通じないと言った方が良い。一方逆に英米系の人のフランス語は抑揚がオーバーで、また独特のフランス語になって聞き分け難い。生まれ育った国の言葉が、生涯付いて回るのだなと、何時も思う。「ジャポニズム2018」で、40億円も日本の税金を使って、オランド前大統領と安倍首相が約束の、政府主導のフランスに向けての日本発信の年であるから、文化、芸能だけでなく、映画女優、大学教授、お役所の専門家も公費で来仏、あらゆる分野で日本の催しがこの一年、来年の2月まで連日のように続いている。

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