「外に出てパリを思う」
とにかく季節はめぐり、パリの街路樹に青葉がいっせいに吹き、マロニエの白やピンクの花盛りである。衣装を夏物に着がえなくてはならないのだが、家内を亡くして急ごしらえの男やもめでは、何がどこにあるのやら不明で、家内の着ていたジーンズだとか、ユニクロのジャケットが手近かにあるので着てみる。あまり身長も違わなかったからギューギューと着てみると体が入る。鏡をみると何と現代モードの若者の姿ではないか。つまり最近は自分が爺い爺いムサクだぶだぶの恰好で、過ごしていたのだと気が付く。
本日のパリ女性の姿は、ストレッチのジーンズでお尻の形バッチリが当たり前、極端なのは股引きそのままでパンタロン穿くのを忘れているような大胆な人も多く、確かに活動的で楽である。男のジャケットも体にゆとりなくピッタリで、ボタンを無理やり合わせ、短い上衣丈、脚ピッタリの細いズボンが若者の姿。それで探すのも面倒だし、つまり家内のもので間に合わせている。「昔は」と言いたくないが、体のラインをはっきり見せるのを嫌い、とても恥ずかしい、下品なことであり、蔽うように作るのが半世紀前の洋服デザイナーの仕事であった。これだけブリンブリンと見せつけて、セクハラ(性的嫌がらせ)でもないもので、挑発行為としか思えない大胆さが、近頃のデザインである。
2018年5月11日 赤木 曠児郎
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