ムーラン通り6番地
「つれづれぐさ」
このところ凱旋門の脇の広場に、長蛇の列ができている。何事かと思うと、ブーロ-ニュの森の中の出来ているルイ・ヴィトン財団美術館行の、専用小型バスの発着所である。メトロの駅からは少し距離があるので、ここで並ぶ人も多い。昨年の暮れから始まっている「シチューキンコレクション」、20世紀の初めにロシアの東洋織物輸入商の一人が、当時まだ無名のピカソ、マチスから、マネ、モネ、ルノアール、ドガなど、1914年の第一次大戦勃発まで買い集めた221点のうち、127点がロシアの美術館から運ばれて展示、話題なのである。10週間で60万人の観客が押し掛け、2月半ば迄の会期を、3月5日まで延長、30分刻みで入場予約という騒ぎ。朝は7時から開き、夜は11時まで開いている。革命で没収、国有財産となっている物だが、人気とは変なものである。そうまで見たいものなのだろうか、ロシアに行って現場で見ればよいのである、何で昔買ってあげなかったのだろう?
パリ政治学院で、「安倍政権の日本の文化政策」というゼミナールがあるので聴講する。20人ばかりの学生、日本大使館から樋口公使も招かれて、学生の質問を受ける。パリ大学のドーフィン校で、国立社会科学高等研究院が主催の「アジアとアフリカの未来」という討論講義が開かれるのも聞きに行く。アフリカ某国の元首相まで講師に並ぶ。大学の講座だから幸いにもフランス語である。日本の専門研究者がいて、いろいろ沢山あるのである。これが国際政治科学研究所となると、近頃は講師の関係で英語の事が多い。英米人の英語ならまだ少し従いてゆけるが、フランス人の英語、日本人の大学教授の英語ときたらお手上げで、分からないから欠席した方がよいとなる。フランス人はフランス語を大事にして、英語を喋らなかったのではなくて、昔は喋れなかったから、格好つけて知らぬ顔していたのである。近年は英語を知らないと仕事にならないから覚える人が多くなり、喋れるところを競って見せようとする。英語が通じるようになりましたねと、近年の旅行者は驚く。
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