ポンプ通り
「朝市にて」
巡回朝市では、衣料品がこんな野菜並みになった時代に感心するが、しかし残飯整理とで、あっさりと毎日集荷に来るゴミ箱にも捨てられる。お仕立屋さんが、いちいち仕立ていた時代とは、すっかりコンセプトが変わっている。アパートに保存すると、置く場所に困るから、近年は郊外大型ショッピングセンター家具屋などででも、手軽に買って、引っ越しの時には簡単に捨てて行く。安物家具メーカーこそ大事な資源を使って、環境公害の大元、何故規制をしないだろうと、腹の立つぐらいベッドでも棚でも捨てられていて、パリに多い住所不定の浮浪者や、東欧からの流浪民が拾って、路傍で利用している。スポンジのマットレスなど、幾らでも見付かる。夕方パリの各アパートビルから、門番によってグリーンのゴミ箱が路上に出される時刻になると、これを専門に漁る人たちが現れる。東洋系、アフリカ系の人も多いが、まだ着られる衣料品、電気器具、家具など、覗き込んで引っ張り出し、集めている。昔からのボロ集め商も成り立っているのである。そこにゴミ収集のベンと呼ばれる専門トラックが来て、追っ払って集め、ゴミ箱を空にして行く。以前はこの市職員、アフリカからの移民系の顔ばかりだったが、近頃は白い顔ぶれも多い。遅い日没、カッフェのテラスで夕食前の会話のひと時を楽しんでいる人達も満杯だが、ゴミにたかるのも毎日繰り返される、パリの日常光景である。
2012年6月4日 赤木 曠児郎
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