「ペロペロ油を舐める秋」

 トロカデロ広場の建築遺構博物館で、漫画と建築という面白い展覧会が、6月から11月28日まで開かれている。20世紀初頭のアメリカ人ウインザー・マッケイの漫画から現代まで、建築を描きこんだ漫画150冊から、350点の画が集められ、漫画が日本発明の専売特許だけでもないことを知らせてくれる。地味な美術館なのに、大勢の児童たちが興味をもって沢山訪れていて、驚く。
 珍しいパーティに出かける。パリ外国特派員協会の、二ヶ月の夏休みバカンスの後、蓋明けの新年度オープニング催しは、油を舐める親睦会であった。利き酒の会というのは珍しくないが、近頃、利き油の趣味もあるのである。これだと車の運転に、問題なくてよい。
 近年は市内に沢山誕生のオリーブ油専門店などでも、試飲の油と、小さな金属カップが置かれ、飲んでみなさいと薦められるし、風味が気に入ると買い物することもある。低温で自然に圧力だけでゆっくりと搾った、初搾りの油は生で飲んで良く、その風味が競われるので、ワールドコンクールもあって、もう8回目だそうである。優勝、優良品60マークばかりが並び、記者発表なのであった。オリーブ油がポピュラーで半分をしめ、他に椿、胡桃、ヒマワリ、菜種、かぼちゃの種、麻の実、葡萄の種、いろいろな油がある。大量に工業的に強圧、加熱、抽出で、量産される油は、対象外である。
 田舎パンにちょっと付けて浸して食べる、小さなカップでちょっと呑む。やっぱり化け猫や、行灯の油を舐めるロクロ首や、一つ目小僧はあったのかなと、ペロペロ不思議な気分であった。アペリチーフタイムに、変わった趣向が流行り始めたものだ。地中海沿岸諸国のマークが殆どだったが、フランスの業者の人に聞いたら、夢は胡麻を搾ってみたいと言う。日本や中国では品不足、大産地のイランは、経済封鎖措置で輸入ができず、材料が手に入らないのだそうであった。

2010年10月10日 赤木 曠児郎

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