グランパレを望んでパリ風景
グランパレを望んで
パリ風景
 

「5月はパリもゴールデン月間」

 国立グランバレ美術館ギャラリーでは、「物語りの表現」といった表題の大展覧会が始まり、7月半ばバカンスに入るまでの3ケ月間続いている。1962年から72年までの10年間、アメリカではポップアートが話題のころ、パリの若い公募展で起こった、当時は抽象絵画全盛だったが、漫画や商業美術を取り入れた具象的な新表現の一派があった。もちろん画壇の流行は、美術の本質にせまるという観念的な理論が好まれ、具体的な表現は過去の古臭いものと片隅に押しやられ、「禅」、「空間」、「物質」と、奇抜さ合戦の流行で、競われていた。意味のある「物語り」を描くなんて、問題にもされていなかった。全てを否定して「空っぽ」、訳の分からないのが前衛、斬新なデザインで有り難がる、そんな競争が続いた。30年も続いてみると、抽象だ、構成だと、まわり中そんなのばかりでは、見せられる方も、退屈なのには変わりない。漫画的な物語りを描こうとした一派にも、何かあったのではなかろうかと、時代の見直し、再評価なのである。18人の当時の作家の、100点近い大作が集められている。早速、パリの各百貨店など、競って漫画や落書き風の装飾を打ち出して、ウインドウ売り出しをしているから面白い。

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