セーブル通り 163番地
 

「日本を旅行してきた」

 仕事で日本に帰ると時間的に不可能なので、今回は暇人に徹して、色々な物を見ようと思った。 昼の部が11時に始まって、夜の部が午後4時に始まる日本の興行も、普通の生活では行くこと不可能の世界である。 能、狂言、歌舞伎、芝居だといっても、普通の家庭の生活では実際には見たことがないと言うのが普通だろう。 日本を代表する芸能が海外公演されるので、海外駐在のチャンスでこの機会に初めて本物を見ましたと言うのが、平均日本人だと思っていたが、日本ではへんなファッションのオバサンが、ワーッと一杯集まって劇場が埋まり、幕合いに弁当を広げる様は壮観、みんな満足してお土産買って帰って行く。 日本健在なりと思ってしまった。
 隣の席にいた数少ないオジサンから、幕合いに「ここ幾らの席ですか」と聞かれ、「そんなに払うんですか、私は株主優待券というのが送られて、見に来たのですが」と目を丸くして、本当に実際切符を買って見る私に、珍獣でも眺めるようにいろいろと話し掛けてくれる。 これも日本人の本音だろうと思ったのだった。

2007年6月7日 赤木 曠児郎  
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