パリ・グランドテル(グランド・ホテル)
 

「催し物の季節」

 1933年(昭和8年)ヒトラーは政権につき頽廃芸術を指定、表現主義、超現実主義、バウハウスも抹殺指定してしまい、正統なヨーロッパのギリシャ、ローマの伝統にたった新古典美術をたたえる。第二次大戦後になって、今度は風向きが逆になって、ヒットラーに嫌われた分だけ、迫害されアメリカに疎開した方が美術界の正統となり、1930年代に活躍した作家は市場から消される。パリでもドラン、プラマンク、スゴンザックなどナチスの時代に招かれてドイツ旅行していただけでレッテルを貼られ、戦後影の部分入り、美術史家の研究も、エコール・ド・パリの後は、ポンとピカソ・マチス中心に戦後に飛んで、抽象芸術で済ます。このイタリア・ノバ展は、いま現代美術の代表みたいなベネチア・ビエンナーレ展の、創設初期の作品が今回出品され、フォーブや立体派のすぐあと、反動的に古典主義復帰の流れが主流で起こっており、当時留学した日本人美術家も沢山いて、戦後の日本の美術界も多大の影響を受けている。ただし今でも世界の美術界では1930年代はオフレコで、研究も出ていないその欠けた繋がりを知らせてくれる。
 話題のアングル展、アンリ・ルソー展、ボナール展、大型の企画展が一杯並んでいる季節だけれど、地味なこの120点ばかり集められた展覧会に二度も足を運んだのである。決して戦後は、消えていない。

2006年5月8日 赤木 曠児郎  
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