「夏の終わりに」
麦を刈った彼方に、黒い尖塔の二本建つお城が見え、近づくと建物全体が大きな掘に囲まれている。在職中に、雨で石積みが崩れて修復が大変だとこぼしていたのは、この部分かなと思ったり、意外に館というスタイルの、近い過去の城ではなく、もっと古い本格の領主のお城である。屋根、壁の修復も殆ど終わり、小さい頃から知っている、今ではこの県の県議会で管理職のポストにある長男、ハーバード大学に留学した次男、結婚したお嫁さん、今でも休みにはコツコツとここに集まって、インテリア装飾、排水、配線工事も自分たちで続けている。この城の昔の書類や図面を国立公文書館の資料の中に見つけては図面を引いたり、ギャレージに使われていた城の教会堂も再建、家族のミサや洗礼式もする。館が住めるようになり、麦畑になっていた地所を買い戻し、昔の庭園を復活中。その隣接の農家の納屋になっていた建物も買戻したが
、今年の突風で屋根が全部舞い上がって飛んでしまい、これから直すのだとか。
今日は日曜で休みだが明朝は、いま屋根裏にゲストハウスの部屋を作っているので、自分でペンキ塗りだという夫人。一生がそのままバカンスと趣味の暮らしだと、凄いフランス精神に感心してしまった。日本人なら平地にして、プレハブかビルでも建て直すところだろう。
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