新聞キオスク
 

「パリの郵便局」

 アフリカ大陸では配達制度は無くて、住所だけだと捨てられてしまう。私書箱を設けないと手紙は届かないのが常識だし、私がイタリーの出版社と仕事していた10年間、郵便局は不安定、先方の社長が絶対使わないで、夜ミラノを出る汽車で、翌朝パリに配達してまわる会社があり、フィルムや契約書、原稿が動くのだった。
 フランスの郵便局窓口の、不合理さには定評があって、人間を行列させて、待たせて平気なのである。1通の郵便でも並んで、切手買うのに20分くらい、みんなイライラ待たされる。貯金業務も、送金、郵便、何でも同じ窓口の上に、庶民住宅地区だと、特に要領や頭の悪いのを配属するらしい、家内に頼むが、郵便局に行くのは1時間近い仕事で、局に行くのを一番嫌がる。
 各人の個人の人権や主張の立派なのは、シラク大統領のアメリカに対する主張のごとく、年季が入っているから、一度順番になると、客の主張も長く、一方は合理化して手早くという概念がなく、労働条件と労働時間の間に決められたことをやり、役人顔して、国営で楽をして安泰にノウノウとしていようという発想、またその局のマネージャーが、大行列の客を、正面の大机にドッシリ座って、急がすわけでもなく眺めていて、平気なのである。
 それから、この国では、他人には絶対に國際でも「書留郵便」は送らない方がよいことも知っておいて欲しい。書留で来る郵便物は、国、税務署の書類とか、督促、裁判、弁護士、まず人間の日常生活の「ロク」なものがない、それで受け取ると、ドキッとなって、不安な気分になる。不在だと局に持ち帰りになり、本人が身分証明書持って局に行き、またこの大行列に並ばねばならないので、善意であってもドキドキしたり、大変不愉快な思いにあわされるので、よい便りを念入りのつもりでも、書留はエチケットとして厳禁なのである。パリ人には、喧嘩の時だけ使う道具と理解していた方がよい。
 家内は日本に行く度に、強中弱と3種の老眼鏡まで置いてあって、糊とかテープまで用意されていて、手助けして、手早く片付けてくれる、郵便局のサービスに感激、素晴らしいと、いつも感嘆の声を上げるのである。

2003年11月4日 赤木 曠児郎  
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