6月5日(水) よる7:00~7:54
備前焼~次代に挑む作家たち~
「月の満ち欠けにあわせて窯を焚きます」と備前焼作家の藤原和(55)はいう。
人間国宝の祖父・藤原啓が潮の干満を見ながら焚いていた手法に解釈を加えたのだ。
作陶を始めて35年、藤原和が今追い求める「容(かたち)の美」とは。
1000年の歴史を持つといわれる備前焼。これまで輩出した人間国宝の数(5人)は日本陶芸界でも抜きん出て多い。一方でこの20年備前焼の売り上げは低迷を続け、人通りの少ない伊部の町にかつての勢いを感じることはない。備前焼は時代に取り残されてしまったのか。しかし人間国宝の伊勢崎淳(77)は希望をつなぐ、「1000年の伝統を守り抜いてきた備前の底力を信じなさい」と。
今、藤原和をはじめ若手作家たちが新しい備前を追求し始めている。
窯元の18代目木村英昭(43)はガウディに影響を受けた。神戸市出身の渡邊琢磨(44)はオーケストラの指揮者を経て備前を志した。備前焼まつりで若い客を集める馬場隆志(30)の作品には新しい彫刻美がある。今伊部の町では個性と感性がうごめいている。次代に向けた備前の潮流。2012年秋から2013年春へ、彼らの姿を追った。
写真= 窯たきをする藤原和